谷中のミー

平成21年10月26日 午後22 : 30頃… その日は冷たい雨がしとしと降る夜でありました。
仕事を終え、いつもの様に駐車場に向かいますと、ボクの車の下から子猫の声が…
その姿を見たらきっと連れて帰る事になるだろうと、そんな予測が直ぐ立つくらい、
とにかく、その鳴き声は幼すぎ、そして助けを求めていました。
しかし、拝宅には既に2匹のネコがおりまして、その内の一人は病弱な故、とてもその娘を連れて帰る事は叶いません。
そんな訳で、女将さんと二人、心を鬼にして、車の下を覗き込み、少しばかりお脅かす様なそぶりを見せ、
車の下からその娘が逃げて居なくなってしまう様にしました。
暫くそんな事を続け、何分、真っ暗でありました故、逃げて走り出す姿は確認出来ませんでしたが、
それでもか細い鳴き声は全く聞こえなくなっておりましたので、車に乗り込みエンジンを掛けます。
それでも、もしかしたら、未だ車の下に居るかも知れないなどとも思ったものですから、
アイドリングの時、アクセルを何度か踏み込みまして、念の為、再度、車のエンジン音で脅かして見ました。
そして、更にゆっくりとアクセルを践み、ハンドル少しを右に切ります。
タイヤが半分位動いた頃でしょうか… 右側の後輪が何かに乗り上げた事を感じました。

その時、後輪からハンドルに伝わった、感触、振動、ボクはもう一生忘れる事は出来無いでしょう。

自分が一体何をしでかしたか、瞬時、ボクには分かりました。。。
極度のパニックに陥りつつ、車のドアを開けると、雨にぬれたアスファルトの上に、
真っ白な子猫が、体を小刻みに震わせ横たわっておりました。。。

翌日、ペットの葬儀屋さんに来て頂き、その子の亡骸を荼毘に付す手配を取りました。
帰り際、葬儀屋さんはボクらに『御位牌はどうします??』と聞かれるので、
その手配をお願いした所、『お名前は?』と云う事になりまして、
初めてその時、その娘の名前を『ミー』と付けてやりました。。。

その亡くなり方が、あまりにも理不尽で、可哀想で可哀想で仕方なく、
それから毎朝毎晩、その場所でボクらはお線香と水を上げ続けました。

その日は日曜日でありまして、普段なら女将さんは仕事が休みなんですが、
ミーの49日にあたる日でありましたので、彼女もお線香を上げる為会社に来ておりました。
すると夕方、、、会社の玄関にあの時の葬儀屋さんの姿がありまして…
そうんなです、49日のその日にボク等はミーの位牌を受け取ったんです。

ミーが許してくれた事を感じつつ、こうした形でボク等の元に帰って来てくれたと云う事が、
本当に、本当に嬉しく、あの時は女将さんと二人で手を取り合って喜びました。。。

毎年、命日や、その日の近辺になりますとお墓参りに行くのですが、
ミーのお塔婆は、こうしていつも同じ場所の一番表に立っていてくれまして…
今年も、この様に、ボク等が来る事を待っていてくれました。

谷中。昔ながらの風情のある街です。
温かかで、そして凛としていて…
また、ネコの好きな方が、多くいらっしゃる様で、、、
そんな方々と街に守られて、ミーは今、谷中で静かに眠っています。

確か昨年も、同様の記事をfbか会社のブログに書いたのですが、
fbの履歴に残ってはおらず、会社のブログも今年一新してしまったもので…
どうしても、ミーの身に起きてしまった事は、この様な文章で残しておきたく。。。
ボクに出来るミーへの供養として、本日、改めてここに記す次第です。

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